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不倫(不貞行為)と慰謝料

慰謝料請求について

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「不貞行為」は、離婚事由になるものとして法律上で定められており、不貞の被害者は、他方配偶者の不貞行為を根拠として、他方配偶者及び不貞行為の相手方に対し、不法行為(民法709条)による慰謝料を請求することができます。

もっとも、この「不貞行為」の定義は必ずしも統一されてはおらず、不貞行為により害される利益をどのように解するかによって変わってきます。
 
実務においては、「配偶者以外の者と性的関係(肉体関係)ないし性的関係に類似する行為を結ぶこと」とされております。

これは、不貞行為によって害される利益を、夫婦の貞操義務(夫もしくは妻以外と肉体関係をもたないという義務)と考えており、必ずしも配偶者以外の者と2人でデートをしたという浮気=不貞行為とはならないことになります。

 

肉体関係がない場合に慰謝料請求は不可能なのか?

それでは、性的関係ないし性的関係に類似される行為がない限り、慰謝料請求はできないのでしょうか。
 
裁判実務においては、肉体関係があったと認められる場合に、慰謝料を支払えという判決が出されることがほとんどではあります。
 
しかし、平成26年3月、大阪地方裁判所で、妻が、夫の交際女性に対し、不貞慰謝料請求を行った事案において、交際女性と夫との間に肉体関係があったとまでは認められないとしつつも、慰謝料44万円の支払いを命じる判決が出されました。
 
このため、今後「不貞行為」を広く解釈する判決が出てくる可能性はありますので、相手方との肉体関係がなくても慰謝料を請求できる可能性があることにはなります。
 

今すぐ専門家に相談しましょう!

慰謝料は当該夫婦の状況、不貞行為に至る経緯によって、判断が異なります。
このため、慰謝料を請求できるかどうかわからない方、慰謝料の額に納得できない方、不当に高額な慰謝料を請求されていると感じている方は、離婚専門の弁護士に相談しましょう。

 

慰謝料を請求したい方は証拠を集める!

不貞行為を行った相手方に慰謝料を請求する場合、言い逃れをされないよう、出来れば裏付けとなる証拠が必要です。

しかし、性的関係(それに類似する行為)を結んだといえる直接的な証拠を実際に集めるとなると困難な場合もありますので、以下のように、間接的に性的関係があったといえる証拠も集めると良いでしょう。

 

興信所・探偵の調査結果報告書

興信所・探偵の調査結果報告書の中に、例えば、パートナーが不貞相手方とラブホテルから出てくる写真などがあれば、不貞行為の立証の見込みは高くなります。しかし、興信所・探偵に支払う費用は決して安くありません。
 
興信所・探偵の費用は、調査に要した期間や人員数等によって開きがありますが、概ね数十万円から場合によっては百万円以上になることもあります。

そのため、確実に証拠を掴めるタイミングに調査の実施を合わせる必要もあります。
また資金的に余裕がなければ、他の方法で立証せざるを得ません。

 

携帯電話のメール、SNSのやりとり

*メールによる不貞の立証
パートナーと不貞相手方とのメール等のやり取りから不貞行為が発覚することもあります。
不貞行為の存在をうかがわせるメールについては、例えば、相手方の携帯電話の画面にメールの内容を表示して、携帯電話ごと写真を撮っておいて、裁判の際に、その写真を証拠として提出する場合がよくあります。

 
写真を撮る場合、メールの送信者とメールの文字が識別できるように撮影することが重要です。
せっかく写真を撮っても記載内容が不明であれば意味がないからです。

*パートナーに黙ってメールを見ることは違法か
メール等を不貞の証拠とする場合、ケースによっては、違法行為となることに注意しなければなりません。
 
例えば、相手方のメール等を盗み見るために、相手方のパソコンに不正にアクセスすることは、不正アクセス禁止法に違反する場合があります。

不正アクセスとは、ネットワーク経由で、利用権限のない外部のコンピューターに接続する(もしくは接続しようとする)行為を指します。
 

例えば、Aさんが、Bさんのメールサービスのユーザー名やパスワードを何らかの方法で知り、または推測して、自分のパソコンを使って、Bさんに成りすまして、メールサービスにログインする、という方法です。

このような行為は、不正アクセス禁止法違反となり、刑事罰を受ける可能性もあります。

しかし、単に相手方の携帯のメール等を盗み見したり、転送したりするにとどまれば同法違反とまではならないでしょう。

ただし、相手方の了解なく携帯電話の内容をみること、そしてそれを保存しておくことは、場合によってはプライバシーの侵害にあたり、慰謝料を請求される可能性があるということは、心にとめておいてもよいと思います。

 

不貞相手と会っていたことがわかるもの
 

パートナーが不貞相手と一緒に写った写真や不貞相手のみの写真も証拠として提出されることもあります。

近年は、パートナーがスマートフォンやパソコンに保存していた写真を、証拠として保存することも多く行われています。また、宿泊施設の領収証、クレジットカードの明細書なども証拠として使用できる場合があります。

 

実際に証拠を集めることができたら

証拠がある程度集めることができた場合、まずは専門家のもとへ一度相談することをお勧めします。

集めた証拠で不足がないか、他に集めることができそうな証拠があるかを検討してもらった方が、後の請求に役立つでしょう。
 

なお、ご自分で直接、相手方と不貞行為について話をする場合にも、以下のようなポイントがあります。
 

ICレコーダー等の準備

当初は不貞行為を認めていながら、後々裁判となった場合に否定する人は、よくいます。
この場合、言った言わないの世界となり、裁判所は不貞行為を認定してくれないことがあります。
そこで、相手方が不貞行為を認めた際に、その会話をICレコーダー等で録音しておくという方法もあります。

この場合、できるだけ具体的な内容を相手方に発言させるということがポイントとなります。
例えば、不貞開始の時期、不貞行為の期間、不貞行為の回数、不貞相手方の名前や職業、不貞相手方と出会ったきっかけ、パートナーが結婚していることを不貞相手が知っていたか、などを押さえておけばよいでしょう。

 

慰謝料額はいくらになる?

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離婚も別居せず、夫婦関係を継続する場合 50万円~100万円程度不貞行為の慰謝料額は、各事案の具体的な事実によって異なってきますが、裁判を起こした場合、概ね以下のように認められる傾向があります。
 

浮気が原因で別居に至った場合 100万円~200万円程度
浮気が原因で離婚に至った場合 200万円~300万円程度
 
裁判例で取り上げられた算定要素としては、以下のものがあります。

算定要素
① 当事者の年齢

② 婚姻期間、婚姻生活の状況、被害者の落ち度
不貞行為により夫婦関係が害されたことに対する慰謝料を請求しているため、害された対象である夫婦関係の状態によって、慰謝料の額が算定されることになります。
例えば、婚姻期間が長く、婚姻生活が円満であれば、認められる慰謝料額は高額となり、逆に婚姻生活が円満でなかったことや、配偶者が不貞行為を行なったことについて、被害者側に落ち度があったと認められる場合には、慰謝料が減額されることになります。

③ 不貞の態様
・不貞期間
不貞期間が長いほど、慰謝料が高額になる傾向があります。

・不貞相手の認識
不貞相手が、自らの行為は不貞にあたると明確に認識していた場合には、慰謝料が高額になるといえます。

ここで、注意を要するのは、不貞相手がパートナーを独身だと認識していた場合、それを立証するのは請求する側ですので、証拠の収集が必要になるということです。


・不貞の具体的内容
不貞行為の回数が頻回になればなるほど、慰謝料は高額になる傾向があります。

・どちらが不貞を主導したか
不貞を主導したのが不貞相手ではなく、被害者の配偶者であった場合には、不貞相手が支払うべきとされる慰謝料額は、減額されることもあります。

・不貞相手の妊娠や出産
不貞相手が、被害者の配偶者の子を妊娠もしくは出産した場合には、不貞の態様が悪質であるとして、慰謝料の増額要素となります。

・不貞を否認していたかどうか
不貞相手が被害者に対し、不貞を否認したり、不貞を解消する約束をしたりしていたにもかかわらず、不貞を継続していた場合には、慰謝料の増額要素となります。

④ 不貞により生じた被害
以上のとおり、不貞が原因で離婚に至った場合には、慰謝料は高額になる傾向があります。
また、被害者の受けた精神的苦痛が甚大であった場合、例えば、不貞が原因でうつ病を発症し、通院加療を余儀なくされた場合などには、慰謝料が増額されることもあります。
さらに、被害者に幼い子がいるという事実も、慰謝料の増額要素となります。
 
以上のような算定要素によって、慰謝料額は異なりますので、慰謝料額についてお悩みの方は、まずは専門家へ相談し、見通しを聞くことをお勧めします。
 
 

■慰謝料を請求された場合

一方で、慰謝料を請求された場合(婚姻関係のある相手と不貞行為はしていた場合)、どのような反論ができるでしょうか。一般的に、以下の2つが考えられます。
 
① 破綻の抗弁
不貞行為をした者に対し、慰謝料請求が認められるのは、被害者である一方配偶者の、円満な夫婦関係という権利利益を害したからです。

そのため、仮に夫婦関係がすでに円満ではなく破綻していたような場合には、特段の事情がない限り、守られるべき権利利益がないということになります。

そこで、不倫の慰謝料請求をされた場合には、「不倫よりも前に、夫婦関係が破綻していたこと」を反論することになります。これが、破綻の抗弁です。
 

「夫婦関係が破綻していた」と認められるためには、双方が離婚の意思を持っており、離婚条件についての具体的な話し合いが進行している場合など、夫婦関係が回復することは不可能といえる程度の状態であることが必要です。

以下、破綻の抗弁の根拠となる事実を挙げます。
 
*別居の有無
不貞行為があったとされる時期に、夫婦が別居していたという事実は、必須の要件とまではいえませんが、重要な意味をもつとされています。本来同居義務のある夫婦が別居し、生活環境を異にすることは、夫婦関係が円満でないことを示すと考えられているからです。
 
別居の期間については、離婚裁判の中で夫婦関係が破綻していると認められるために必要な期間ほど長期間でなくともいいとされているようですが、それでも半年や1年の別居では破綻を認めていない裁判例が多いように思います。 なお、いったん別居したとしても、後日再び同居した場合には、破綻が否定される傾向にあります。
 
*離婚に向けた準備が具体的に進んでいたこと
破綻と認められるためには、離婚の話が具体的に進んでいる必要があります。
夫婦間で離婚の話が出たり、離婚届を作成していたりするだけでは不十分です。
離婚調停が申し立てられていたという事実も、直ちに破綻と認められるものではないようですが、他の要素と相俟って、破綻を認める方向に働く可能性はあります。
 
*夫婦仲が冷えきっていること
不貞をしたとされる配偶者が、夫もしくは妻に強い嫌悪感を持っていたり、将来離婚したいと固く決意していただけで、直ちに破綻とは認められません。

もっとも、双方が互いに関心を持たずに接触がない、生計を別にしていたというように、法律上は夫婦であっても、実質的には夫婦としての実態が認められないような場合には、破綻が認められる可能性があります。

 
② 破綻を過失なく信じたこと
破綻の抗弁が認められない場合でも、不貞相手が、被害者とその夫(妻)との夫婦関係が、不貞当時既に破綻していると信じ、かつ信じたことに過失がない場合には、不法行為は成立せず、慰謝料を支払う必要はないと解されています。
 
ただし、不貞相手が交際相手は既婚者であることを認識している場合には、安易に不貞関係に入らないように注意すべきですし、不貞の誘い文句として、夫(妻)との関係が破綻していると嘘をつくことは多いです。
 
そのため、信じたことに過失がないとされるには、交際相手の言葉を信用したと主張するのでは不十分で、その言葉を裏付ける根拠があったことを主張する必要があり、この反論は簡単には認められないでしょう。
 
裁判例においても、不貞相手が、交際相手から、夫婦関係がうまくいっておらず、離婚の話が進んでいると聞かされており、職場の同僚からもその旨の話を聞いていた場合でも、当時、交際相手が妻と子どもたちと自宅で暮らしていたことを知っていた場合に、婚姻関係破綻について過失があるとされ、反論は認められませんでした。
 
慰謝料を請求されており、ご自身が不貞行為自体はしてしまったことを認める場合であっても、まずは離婚問題を専門とする弁護士へご相談されることをおすすめします。

 

慰謝料を請求できる時期(時効の問題)

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不倫の被害者の慰謝料請求権は、不法行為による損害賠償請求権ですので、「被害者が損害及び加害者を知ったとき」、すなわち、不貞行為の存在と不貞相手を知ったときから3年以内に行使する必要があります(民法724条)。
慰謝料請求をする場合には、消滅時効に注意する必要があります。


消滅時効が完成し、相手方に時効の援用をされてしまうと、権利行使ができなくなってしまいます。
 

 

時効の起算点について

・「不貞行為の存在を知ったとき」とは、実務上、パートナーの不貞行為が発覚した日を指し、判例も、一方配偶者と不貞相手が同棲していた場合、被害者である他方配偶者が、同棲関係にあることを知ったときから消滅時効が進行すると判示しています。
 
・「不貞相手を知ったとき」というのは、現実の氏名及び住所を知ったときを示します。
 

*不倫が原因で離婚した場合の起算点について

上記の場合「不貞行為を知ったとき」の解釈として、裁判例は、「不貞行為のみならずこれにより婚姻関係が破綻し離婚に至ったことをも含むものである」として、「遅くとも離婚の届出がなされた」日を起算点とし、あるいは、元配偶者の有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことによる損害は、離婚が成立して初めて評価されるものなので、離婚が成立したときに初めて、元配偶者の行為が不法行為であることを知り、かつ損害の発生を確実に知ったこととなると判示しました(最判昭和46年7月23日)。

これらの裁判例によると、離婚が成立したときから消滅時効が進行することになりますので、離婚成立後3年以内であれば、慰謝料が請求できることになります。
 

時効が完成してしまうと請求自体できなくなるという最悪の結果になりえますので、専門的な判断は必須です。

不貞行為を発覚してから3年近く時間が経過している方は、すぐに専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。

 

慰謝料請求をする場合には、消滅時効に注意する必要があります。

消滅時効が完成し、相手方に時効の援用をされてしまうと、権利行使ができなくなってしまいます。

投稿者プロフィール

高橋 善由記
高橋 善由記
弁護士 仙台弁護士会所属
専門分野:離婚
経歴:仙台生まれ。仙台第一高等学校卒業後、上智大学文学部英文科に進学。卒業後、平成14年に弁護士登録。勅使河原協同法律事務所(仙台)を経て、平成24年に高橋善由記法律事務所を開業し、現在に至る。主に離婚問題の解決に従事し、相談者の抱えている問題に寄り添いながら最適な方法を提案し、新たな人生の始まりをサポートしている。